11月に94歳を迎えたご近所のKさん。
昭和6年生まれ。
わたし的には93歳の方がわかりやすいんですが、
本人が数え年で94歳言ってますから、
それでいっちゃいましょう。
でもまあ、
お腹の中で約1年成長しながら生きてきたんですから、
94歳みたいなものですよね。
わたしの祖父母で唯一健在の祖母も、
ちょうど昭和6年生まれ。
自分の年齢を2倍してもまだ届かない。
すごいです。
Kさんとは、
この土地へ越してきてからのお付き合いです。
1年と2ヶ月。
すんっっっごく古いお家がどーーーんと建っていて、
とにかく気になってしょうがありませんでした。
ある日の朝、
ぼんな(柴犬)のお散歩で家の前を通ると、
ちょうどKさんが門を開けて敷地から出てきました。
ぱっと見、ちょっと気難しそう...
とりあえず元気にごあいさつ。
「おはようございますっ!!!」
すると、
ぼんなを見てにっこり。
犬がとても好きだとのこと。
過去に飼っていた犬の話をしてくれました。
それからしばらくしたある日のこと。
ぼんなのお散歩に出かけるとまたばったり。
「お、待ってたぞ」と言いながらも、
家の中へ。
すぐにまた大きな鍋を持って戻ってきて、
「ほら、食え」と地面に何かを放り投げました。
ものすごい勢いでかぶり付くぼんな。
「豚ガラだ、ラーメンの出汁をとったんだ」
え、ラーメン?
あ、
わたし、
ラーメンめっちゃくちゃ好きです。
好きな食べ物は?と聞かれたら、
ラーメン、寿司、刺身!
と答えます。
なもんで、
一気にKさんに引き込まれちゃって、
ますます興味がわいて、
あれは?これは?
と質問攻めにしたかったんですけど、
Kさん、
耳が遠くてこちらの言いたいことが全く伝わらなかったんですね。
でも、
とりあえず向こうの言いたいことだけは分かります。
45年前まで駅前で食堂をやっていたこと、
廃線になって閉めたこと、
などなど情報はもらえました。
そしてその日は、
残りの豚ガラをもらって帰りました。
で、思いつきました。
目はよく見えているようだったので、
豚ガラをもらったお礼の品を持って、
『ラーメンスープの作り方を教えてください!』
と手紙を書きました。
「ラーメンの作り方が知りたいだって?」
「それじゃあまず食いに来い」
と、なんと後日ご招待されました!
いただいたのがこちらのラーメン。
器は45年前まで食堂で使っていたものだそう。
出汁の味がストレートに伝わる。
あっさりだけど深い。
あまい豚の香りとほんのり塩のしょっぱさ。
朝からでも飲みたいスープ。
呑んだあとに包まれたいスープ。
いろんなラーメンを食べてきたけれど、
一生食べ続けたいラーメンはこれだ!と思いました。
ちょっと話戻ります。
のこのこ主人とふたりでラーメンをいただきに行ったら、
「なんで犬連れて来ないんだ?」
当たり前のように言われ、
即自宅に戻り、
ぼんなもおじゃましました。
このあと、
食べられない骨の部分を床に突っ散らかしますが、
そんな様子も嬉しそうに眺めるKさん。
ぼんなも一緒にラーメンどんぶりでいただきました。
話は戻ります。
おじゃましたKさんのご自宅が、
それはそれは魅力的で、
どこを見ていいか分からないくらい興味津々でした。
45年前、
廃線と共に駅前食堂を閉め、
職を求めて都市部へ出てきたKさん。
その後、
一級建築士の資格を取り、
宮大工も。
今のご自宅は自分で建てられたそう。
この形は宮大工ならではのあそび?
ずーっと見ていられる形。
なんと薪ストーブもガス缶で自作。
ガス缶がよくわからないけれど、
これ、最初から薪ストーブじゃないの?
というカッコイイかたち。
家中のいろんな物が手づくり。
実は92歳の奥さんと二人暮らし。
体の自由があまり効かない奥さんのお世話をしながら、
日々の生活、畑、薪作りなど、
すべて自分でやられています。
1㎞以上離れたスーパーにも、
大きなリュックを背負って歩いていっちゃうんですよ。
大雪が降っても、
毎日欠かさずしっかり除雪しちゃうんですよ。
自分で自分の暮らしを作りあげている。
自由自在に。
94歳の今でも。
自分の10年後、20年後、
どう暮らしていたいのか全く想像できないのに、
半世紀後の理想の姿がはっきり見えました。