近所に住む、
スーパーおじいちゃん、Kさん。
昭和6年生まれ、94歳。
92歳の奥さんのお世話をしながら、
家事だけでなく
畑や薪作りも
なーーーんでも自分でやっちゃう
スーパーおじいちゃんです。
2週間ほど前のこと。
朝、Kさんに会いました。
「前にラーメンの作り方教えてほしいって言ってたな」
「今から買い物に行って作るか」
ラーメンの作り方を教えてほしいとお願いして、
「まず食べに来い!」
とお邪魔したのがたしか4月頃の話。
あれから半年、
ようやく念願のラーメン作りを教えてもらえることに。
とはいえ、
急すぎる。
急すぎるけれど、
せっかくのチャンス。
ありがたく教えてもらうことにしました。
急いで家へ戻り準備をし、
車でKさんをお迎えに。
前にも一度、
仕事に行く途中でスーパーへ歩いて向かうKさんを見かけ、
店の前まで乗せて行ったことがあります。
ですが、
わが家の車はトヨタのプラド、
車高が高いのです。
しかしながら、Kさんは
「足短えから届かねえな〜」
と言いながら手助けなしにひょいと乗ってしまうのです。
もちろん降りるときも一人で。
どんだけスーパーロージンなんでしょう。
話は戻りまして、
お店に着いて店内へ。
にんじんや玉ねぎなど出汁を取る野菜は、
実家から送ってもらってたくさんあることを伝え、
それ以外の材料を買うことに。
Kさんも自分の生活に必要な買い物をしながら、
ラーメンに必要な材料があるコーナーに着くと、
ちゃんと説明して買うように促してくれます。
具材となるもやし、たけのこ、たまご。
スープを取る豚骨、鶏ガラ。
チャーシュー用の豚モモかたまり。
麺はなぜか6人前。
個人的にはあまり使いたくないコンソメもビックサイズ。
そして一番謎のオリーブオイル。
「これラーメンに使うんですか?」
と聞いても、耳が遠くわたしの声が届かない。
聞きたい質問の答えが返ってこない。
ま、いっか。
あとはお会計をするだけというタイミングで、
「大きい鍋は持ってるか?」
手で直径20㎝くらいの大きさをつくり、
「これくらいの鍋ならあります!」
「そんなんじゃ小さ過ぎる、ダメだ」
まさかの材料揃えたけど鍋無い問題。
どうしよう・・・
「Kさんの鍋貸してくださーい」
「俺の鍋は穴空いてもう使えん」
ということで、
急きょ鍋探しの旅に出ることになったのです。
まずはスーパーの上にある2階のキッチン用品店へ。
無い。
次は、近くのホームセンターへドライブ。
30㎝のアルミ鍋発見!
「ダメだ、それじゃ小さ過ぎる」
「もっと大きいやつだ」
今度は少し離れたもっと大きいホームセンターへ。
同じ大きさの鍋が置いてありましたが、
「札幌にはこんな小さい鍋しか置いてないのか・・・」
「Kさん、インターネットなら大きいの買えますよ!」
「今日はラーメン作れないですが、数日で届くと思いますよ!」
諦めないKさん、94歳。
「思い出したぞ、あそこならなんでも置いてあるんだ」
「場所はわかる、行くぞ」
わたしにはさっぱりわかりませんでしたが、
とにかく行ってみることに。
またドライブ。
着いたのは『ニトリ』。
家具、インテリア専門店。
多少の生活雑貨やキッチン用品も。
やはり無い。
「Kさん、やっぱりネットで買います!」
「そうだな、仕方がないな」
スーパー、ホームセンター、ニトリ、
あっちこっちドライブして、
その度に車高の高い車を乗り降りして、
おまけに広い店内をぐるぐる、
心配になっちゃって何度も訊ねる
「疲れてないですか?」
その度に
「はあ、なに言ってんだ」
と笑う。
どんだけスーパーロージンなんでしょう。
なんとか鍋を諦めてもらって自宅に送り届け、
Kさんが一体どんな鍋で作っていたのか見せてもらうことに。
無い。
「あれ〜おっかしいな〜」
外にぶん投げたらしい。
庭や果てしなく広い倉庫をうろうろすること30分。
あったーーー!
直径50センチほどのアルミ鍋。
で、でかい・・・
家に帰ったあと、
お向かいの奥さんに相談。
いつも何かと相談に乗ってもらっている
歳の離れたお姉さんのような方。
新品のまま10年?使っていない鍋をくれるという。
今日買ってきた豚骨や鶏ガラが十分入る大きさ。
これでいいんじゃないか?
翌日、
朝一でKさんに鍋を見せに行く。
鍋を見るなり、
「インターネットにはそんな小さい鍋しか売ってないのか」
う、うん、そういうことにしておこう。
「しょうがねえな・・・」
「豚骨と鶏ガラの量を半分にしよう」
「この鍋だとどれぐらいのスープが作れるんですか?」
「せいぜい15人分くらいだな」
?
??
???
確かによく考えればわかることかもしれない。
鍋が大きければたくさん作れるし、
鍋が小さければ少しだけ作れる。
だけど、
とにかく大きな鍋じゃないとけないと言うから・・・
心から尊敬するKさんのことを、
疑う余地はどこにもなかった。
もし、
Kさんの庭に転がっていた鍋と同じ大きさの鍋を購入して、
Kさんに言われるがまま直径50㎝の鍋でスープを作っていたら・・・
ご近所に振る舞えと言うことか?
まあいいんですけど。
え?
もしかして?
わたし、
ラーメン屋を開くとでも?